Trouble in mind ジャズ初心者でも簡単にわかる戦前音楽解説シリーズ。

こんにちは。ブルーススタンダード[Trouble in mind]をジャズ初心者でも簡単にわかるように解説するコラムです。

時代はおよそ100年前、場所はアメリカのイリノイ州シカゴです。第一次世界大戦後の当時、ビールはドイツ由来だから悪だとか、ウィスキーは中毒を引き起こすから生産性が下がるからとか、グダグダな議論がグシャグシャっとなって『じゃあもう飲酒用のアルコールを禁止すればいいんじゃね?』という、天下の悪法と呼ばれる法律が施行されていました。その法律を”禁酒法”といいます。

『飲み方の問題では?』という冷静な議論ができない辺り、100年後の日本もまったく同じようなことをやっててまったく笑えないんですが、とにかく許可なく酒を作っても、運んでも、飲んでもタイーホされるという状況でした。

飲むな、と言われたら飲みたくなるのが人間のSAGAということで、あの手この手を浸かって酒を手に入れようとしました。ある者は医者に治療薬としての飲料用アルコールを処方させ、ある者はムーンシャインウィスキー(密造酒)やブートレッグウィスキー(密輸酒)を裏社会の組織から用立てしていたらしいです。この当時、裏社会の組織がとんでもない力を伸ばしていた都市がイリノイ州シカゴでした。

リチャード・マリニー・ジョーンズは1892年にニューオリンズで生まれ育ち、1920年代には仕事を求めて北上し、ここシカゴでピアニスト、作曲家として活躍していました。

時は少し遡り1908年、彼はニューオーリンズの歓楽街である”ストーリービル”で腕を鍛えました。持病で足を悪くしていたジョーンズはミュージシャンの道へ進み、自らのバンドでジョー・オリバーらジャズの名手を率いていました。しかし、良い時代は続かず、世界初の大戦、ストーリービルの閉鎖、禁酒法制定と続き、多くの南部出身のミュージシャン同様1918年、ジョーンズは北を目指しシカゴに落ち着きました。

ジョーンズはピアニストとしてだけでなく、バンドリーダー経験を活かしてか、持ち前のマネージメント能力を発揮し出版やレコードプロデューサーの仕事にも手をつけていました。

ジョーンズの初レコーディングはシカゴに移住した5年後の1923年、彼のバンドである”ジャズウィザードとシカゴコスモポリタン”名義で蓄音機のレコードを録音しました。その手腕を買われ、OKehやVictorを初めとした主要レーベルの”レースミュージック”というアフロアメリカンの音楽を扱う部門の顧問も勤めました。

このレコードプロデューサーとしての最大の功績と言われているのは、同郷のコルネット奏者の名と演奏を世に放ったことです。そのコルネット奏者の名前は”ルイ・アームストロング”と言います。

後にルイアームストロング率いるホットファイブ、ホットセブンはアメリカを飛び出し、世界中で知られる存在となりますが、その立役者こそジョーンズその人でした。

さて曲の紹介をしましょう。1924年、本曲[トラブル・イン・マインド]は”テルマ・ラヴィッツォ & ジョーンズ”が初録音を残しましたが、1926年の”ベルタ・チッピー・ヒル”とルイ・アームストロングのバージョンが有名です。

8小節のドラマチックな歌詞を持つこの楽曲を”ボードビルブルース”と呼びます。

ボードビル(Vaudeville)とは、フランスパリ由来の舞台及びショー・ビジネスの形態で、国内外の商人などが行き交う大規模な市場で開催されました。アメリカにも古くから輸入され、踊りや歌、手品、コメディなどアメリカ風味にアレンジされながら大衆娯楽とし愛されていました。

そして時代は禁酒法真っ只中。商業レコード時代の黎明期で聞けるブルースナンバーは表向きは”舞台向け”のもので、後の酒場絡みのブルースやブルーズマンというのは禁酒法が明けてから世に出ることになります。

これ、超重要な要素なんですが、あまり日本では語られない、戦前ブルースを聞くポイントになります。

同年代を代表するボードビルブルースに[Tain’t nobody’s business(1922年)]
[Nobody knows you when you down and out(1923年)][St. Louis blues(1925)]があります。

最後に歌詞についての解説をしたいと思います。この歌、前半で死や絶望を、後半で希望を示唆するというひとつの楽曲に二面性を持たせている構成は画期的で、その後のジャンルを超えたミュージシャンや作家に影響を与えました。ルーツと言われる”黒人霊歌”の歌詞についても研究されていますが、まだ解明には至っていないようです。

*黒人霊歌については同解説シリーズのDown by the river side参照

『時々 生きているんだか 死んでいるんだかわからなくなるのさ。2:19 あの線路に 頭を横たえて そんな悩みは消しちまおう』

『いつまでも憂鬱じゃいられない 太陽の輝きはもうそこまで来ているから』

以上、Trouble in mindの解説を終わります。孤独のヒュードのYouTube演奏を動画もありますのでズムッとお聞きください。

井上大地

投稿者: Daichi Inoue 井上大地

Guitarist, Song writer

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。