Home on the range ジャズ初心者でも簡単にわかる戦前音楽解説シリーズ。

こんにちは。アメリカ民謡の名曲[Home on the range]をジャズ初心者でも簡単にわかるように解説するコラムです。

時代は今から150年前、場所はアメリカカンザス州です。

日本では[峠の我が家]の放題で知られるこの曲は、現在アメリカ西部における”非公式の国歌”と呼ばれ、1947年にはカンザス州歌として登録された古典的な民謡です。

このオリジナル作詞者と作曲者の”友情によって作られた事実”は、長らく他人の著作、もしくは作者不詳とされていたことにより、あまり知られていません。

この曲が書かれた時代背景と共に本曲の歴史を見ていきましょう。

1862年、アメリカ合衆国ではアメリカ西部の未開発の土地1区画160エーカー(約650㎡)を無償で払い下げるというかなりおおざっぱ、かつ太っ腹な法律が制定されました。この名実ともにアメリカーンな法律を”ホームステッド法(自営農地法)”と言います。

『人民の人民による人民のための政治Yo!!』

のRhymeで有名なレペゼン・ケンタッキーのラッパー”エイブラハム・リンカーン”が署名するやいなや、野心溢れる荒野の開拓者達は我先にと広大な土地を開発しまくりました。

1986年、この法律による最後の承認が降りるまで、160万件の土地払い下げが認められ、その面積は2億7,000万エーカー(約110万k㎡)と言われ、アメリカの国土の10%が農地として開拓されました。

日本の面積は37.8k㎡と言われているので、人間大陸クラスの欲望に火がつくと、とんでもない力を発揮することが良くわかる事象でもあります。

なおこの法律により、極悪な開拓民や騎兵隊の先住民の虐殺と迫害、動物の乱獲による絶滅種・絶滅危惧種の問題、開拓民同士の争いや不正など絶対に笑ってはいけない”闇の歴史”が多数存在したことは、ここで申し上げておきます。

さて曲に話を戻しまして1871年、インディアナ州からホームステッド法に基づいてカンザス州スミス郡の土地を取得した医者がいました。彼の名前は”ブルースター・M・ヒグレー”と言います。

ウェストビーバークリークという小川近くに居を構えたヒグレーは、周囲の美しい環境に触発され詩を執筆しました。スミス郡パイオニア新聞へ[My Western Home]というタイトルで寄稿したところで、この歌の歴史は終わるかに見えたのですが、この記事を目にしたヒグリーの友人がある提案をしました。

ヒグレーの友人の名前は[ダニエル・E・ ケリー]です。この美しいオリジナル歌詞に、ケリーはギターを用いてメロディーをつけました。医者とその友人によるこの歌は、公式に楽譜が全国出版されるようなことは起きませんでしたが、牧場主、カウボーイなど西部入植者によりたくさんの”替え歌”が作られ中西部各地で歌われていたそうです。その後ケリーは1905年に、ヒグレーは1911年に死去しており、その直後に著作権を巡って長年あいまいな議論がなされていました。

1910年、ジョン・ローマックスという民俗学者によってこの曲の起源が[カウボーイソング・フロンティアバラード]という本で紹介されました。ローマックスはテキサスの酒場経営者からこの曲を学んだと著述し、これにより盗作訴訟を受けることになりました。

さらに時が進んで1925年、テキサスの作曲家であるデビッド・W・ギオン(1981年没)は、G・シャーマーという作曲家による曲として、アレンジ楽譜を出版しました。こちらもかなーり突っ込み所がすごいんですが、1920年代は楽譜やレコードによる権利ビジネスが台頭してきた頃で、他人の楽曲を編曲して出版、最悪の場合自分が書いたことにして著作権登録してしまうこともありました。

1933年9月27日、この曲のオリジナル音源となるレコードを録音したのは、当時人気絶頂の歌手”ビング・クロスビー”でした。クロスビーは”レニー・ヘイトンと彼のオーケストラ”と共にブランズウィックレコードに録音しヒット作となり全国で聞かれるようになりました。

1946年には”フランク・シナトラ”も録音を残し、その翌年カンザス州の州歌に登録されます。

アメリカ西部開拓時代の欲望と、闇の歴史を飲み込み、盗作騒ぎに巻き込まれ、人気シンガーのレパートリーに。現在では”愛国者の歌”という尾ひれまでついてしまったと言われている本曲。

でもその正体は、都会で生まれ育った医者が片田舎へやってきて、小川や草原という自然や環境に感動して詩を書いた。それに友人がギターでメロディをつけてくれたという”ひどく個人的で美しき友情の歌”だったんですね。

以上で[Home on the range]の解説を終わります。孤独のヒュードによるYouTube演奏動画もありますのでバスンとご覧ください。

井上大地

投稿者: Daichi Inoue 井上大地

Guitarist, Song writer

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